2026年11月2日
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物忘れが増えたら|認知症との違いとMCI(軽度認知障害)のサイン
「冷蔵庫を開けて、何を取りに来たのか忘れた」「知っている人の名前が、のどまで出てこない」。このような経験が増えてくると、「もしかして認知症では」と不安になるものです。
しかし、年齢を重ねれば誰でも物忘れは増えます。大切なのは、ふつうの物忘れと病的な物忘れの違いを知り、気になったときに早めに動くことです。この記事では、その見分け方と、その手前の段階とされるMCI(軽度認知障害)について、わかりやすく説明します。
1. ふつうの物忘れと認知症の物忘れの違い
一番わかりやすい見分け方は、「体験そのものを忘れたか、思い出せないだけか」という点です。
- ふつうの物忘れ…「昨日の昼ごはんに何を食べたか」を思い出せない。でも、ヒントをもらうと「そうそう、天ぷらだった」と思い出せる。
- 認知症の物忘れ…食べたこと自体を忘れてしまう。ヒントをもらっても思い出せず、「食べていない」と言う。場合によっては、食べた直後にもう一度食事を求めることがある。
ほかにも、次のような違いがよく挙げられます。
- 約束を忘れる…たまに忘れる/約束したこと自体を忘れて、何度も同じ約束をする
- 物をなくす…どこに置いたか思い出せない/財布を冷蔵庫に入れるなど、置く場所がおかしい
- 料理や買い物…段取りが悪くなったと感じる程度/手順そのものがわからなくなる
- 時間や場所…曜日を間違えることはある/今がいつ、どこにいるのかわからなくなる
また、本人が「物忘れがひどくなった」と自覚して心配している場合は、加齢による物忘れのことが多いといわれます。逆に、本人だけが気づかず、家族が心配しているケースでは、注意が必要なこともあります。
2. その手前の段階「MCI(軽度認知障害)」
MCI(Mild Cognitive Impairment)は、「年齢相応の物忘れよりは多いけれど、日常生活はほぼ自立して送れている」状態を指します。日本語では「軽度認知障害」と呼ばれます。
MCIは「認知症の一歩手前」と説明されることがありますが、必ず認知症に進むわけではありません。研究によって差はありますが、MCIの人のうち毎年およそ1割前後が認知症に移行する一方、同じくらいの割合の人が元の状態に戻ることも報告されています。
MCIの特徴としてよく挙げられるのは、次のようなものです。
- 最近の出来事を覚えにくい(昔のことはよく覚えている)
- 買い物の支払いや、家計の計算に手間取るようになった
- 新しい機械(スマホ・リモコン)の使い方を覚えにくい
- 話したい言葉が出てこず、会話が止まることが増えた
- やる気が起きず、外出や人づきあいが減った
ただし、MCIかどうかは、医師の問診や簡単な記憶のテスト(神経心理検査)で判断します。自分だけで決めつけないことが大切です。
3. 気づいたら早めに相談する理由
物忘れが気になったら、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。理由は主に3つあります。
- 治る原因が隠れていることがある…甲状腺(こうじょうせん)の病気、ビタミン不足、うつ病、薬の飲み合わせなどでも、物忘れのような症状が出ます。これらは治療で改善することがあります。
- 早くわかれば準備ができる…認知症は早期に発見することで、生活の工夫や支援制度の利用、運転やお金の管理の準備を、本人の意思を交えて進められます。
- 本人も家族も安心できる…「気のせい」と思って何年も悩み続けるより、検査を受けて状態を知るほうが、心の負担は軽くなります。
相談先は、かかりつけ医で構いません。「物忘れが心配です」と伝えれば、必要に応じて専門の医療機関(脳神経内科・精神科・認知症疾患医療センターなど)を紹介してもらえます。市区町村の地域包括支援センターでも、無料で相談できます。
この記事の内容は一般的な情報であり、診断ではありません。物忘れの程度や原因の判断、治療については、必ず医師などの専門家に相談してください。また、運転の可否や財産の管理など法律に関わることは、医師や司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。
4. 今日からできる予防の習慣
今のところ、認知症を確実に防ぐ方法は見つかっていません。しかし、リスクを下げる生活習慣は数多く報告されています。難しく考えず、続けられることから始めましょう。
- 歩く…1日30分程度のウォーキング。人と話しながら歩くと、脳への刺激がさらに増えます。
- よく噛む・しっかり食べる…魚、野菜、大豆製品を中心に。塩分の取りすぎに注意しましょう。
- 人と会う…おしゃべりは最高の脳トレです。地域のサロンや趣味の集まりに顔を出してみましょう。
- 血圧・血糖・耳の聞こえを大切に…高血圧や糖尿病の放置、聞こえにくさは認知症のリスクと関係が指摘されています。
- 計算や音読を取り入れる…買い物の暗算、新聞の音読など、頭と口を使う習慣が手軽です。
5. 家族が気をつけること
家族は、問い詰めないことが何より大切です。「さっきも言ったでしょ」と責められると、本人は傷つき、外に出るのがおっくうになります。代わりに「一緒に探そうか」「メモに書いておくと安心だね」と、味方でいる姿勢を見せてください。
また、家族自身が抱え込まないことも大切です。地域包括支援センターや、家族の会(認知症の人と家族の会など)に相談すると、同じ立場の人と話せて気持ちが楽になります。
まとめ
- 体験そのものを忘れる/ヒントでも思い出せない場合は、早めに相談を
- MCIは日常生活がほぼ自立している段階。必ず認知症に進むわけではない
- 甲状腺の病気やうつなど、治せる原因が隠れていることもある
- かかりつけ医・地域包括支援センターに相談すればよい
- 歩く・よく食べる・人と会う。今日からできる習慣を続けよう
物忘れを自覚して心配しているうちは、まだ大丈夫なことが多いものです。ひとりで抱えず、まずは身近な窓口に話してみてください。