2026年10月28日
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亡くなった家族の医療費は医療費控除できる?相続した年の確定申告と「扶養控除」の落とし穴をわかりやすく解説
「父が亡くなった年、入院費やおむつ代をかなり払った。あれは確定申告で取り戻せないのかしら」。葬儀や相続の手続きがひと段落したあとに、ふと気になるのが税金のことです。
結論から申し上げますと、亡くなったご家族のために支払った医療費は、支払った本人の「医療費控除」に使えます。ただし注意していただきたいのは、亡くなった方の収入と税金を精算する「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」とは別の手続きだという点です。この記事では、ご家族を看取ったあとに知っておきたい税金の話を、順番にやさしく説明します。
1. 医療費控除は「同じ財布で暮らした家族」の分まで合算できる
国税庁のタックスアンサー(No.1120)によると、医療費控除は「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族」のために支払った医療費が対象です。「生計を一にする(せいけいをいつにする)」とは、生活費を同じ財布から出しているという意味です。同居していなくても、仕送りで生活を支えていれば該当します。
つまり、息子さんやお嫁さんが、亡くなる前のお父さん・お母さんの入院費を立て替えて払った場合、その支払った人が自分の確定申告で医療費控除を申請できます。逆に、お父さんの預金口座から振り込んだ医療費は、お父さん自身の医療費です。亡くなったあとに準確定申告で精算することになります。
2. 忘れがちな「控除できるお金」と「できないお金」
介護が長引くと、レシートの数が膨大になります。国税庁のNo.1122(医療費控除の対象となる医療費)とNo.1126(入院費用の具体例)をもとに、判断に迷いやすいものを整理しました。
対象になるもの
- 介護保険の施設・居宅サービスの自己負担額(介護老人保健施設、介護医療院、指定介護老人福祉施設=特養などに入所したときの自己負担)
- 看護師や特に依頼した人による療養上の世話の対価(家政婦さんに病人の付き添いを頼んだ費用も含みます)
- 入院中の食事代(病院が提供する食事は入院費に含まれます)
- 通院の電車代・バス代(付き添いの家族の交通費も含みます。領収書が出ないので、日付・区間・金額をメモしておきましょう)
- 義歯・眼鏡・補聴器・松葉杖・コルセットなどの購入費
- あん摩マッサージ・はり・きゅう・柔道整復師の施術料(治療に直接関係するもの)
対象にならないもの
- 差額ベッド代(本人や家族の都合で個室を選んだ場合)
- タクシー代(電車やバスが使えない場合を除く)
- 自家用車で通院したときのガソリン代・駐車場代
- パジャマ・洗面具などの身の回り品
- お見舞いの品、医師や看護師への心付け・謝礼
- 健康診断の費用(原則。ただし市区町村が行う特定健康診査などは対象になる場合があります)
おむつ代は、成人用のおむつを医師が発行した「おむつ使用証明書」などで必要性が確認できる場合に、医療費控除の対象になるとされています。証明書がないまま自己判断で計上すると、あとで説明を求められることがあります。介護施設に入所中で一定の要件を満たす場合は、市町村の確認を受けた書類で代えられる取り扱いもありますので、施設の担当者か税務署に事前にご確認ください。
3. 計算のしかたは「引き算が2回」だけ
むずかしく見えますが、やることは引き算が2回だけです。
・補てんされた額…高額療養費、生命保険の入院給付金、出産育児一時金など。
・10万円…その年の総所得金額等が200万円未満の方は、10万円ではなく「総所得金額等×5%」になります(例:所得120万円なら6万円)。
・控除額の上限は200万円です。
年金暮らしのご家庭では、この「所得が200万円未満ならハードルが下がる」という点が特に大切です。収入が年金だけの方は、10万円に届かなくても控除を受けられる場合があります。ご自分の「総所得金額等」は、届いている「公的年金等の源泉徴収票」の「所得金額」欄を見れば分かります。
なお、平成29年分からは領収書を申告書に添付する必要がなくなりました。そのかわり「医療費控除の明細書」を作成して添付します。ただし領収書は申告期限から5年分を保管しておく必要があり、税務署から求められたら提示しなければなりません。また、加入している健康保険から届く「医療費のお知らせ」(医療費通知)を添付すると、明細書への記入を大幅に省けます。1年分の医療費の集計は、国税庁のサイトにある「医療費集計フォーム」(エクセルなどで入力する用紙)を使うと便利です。
4. 混同しやすい「準確定申告」との違い
亡くなった方が1月1日から亡くなった日までに受け取った年金などの所得は、その方の相続人が代わりに申告して納税します。これを準確定申告といい、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に、亡くなった方の住所地を管轄する税務署へ提出します(この期限や対象者は毎年変わる可能性は低いものの、個別の判断が必要です)。
ここで大事なのは、医療費控除をどちらの申告で使うかは、その医療費を「誰の財布」から払ったかで決まるということです。
- 故人の口座・現金から支払った医療費 → 故人の準確定申告で控除する
- ご家族の口座から支払った医療費 → そのご家族のその年分の確定申告で控除する
同じ医療費を両方の申告で二重に使うことはできません。通帳の記録で振込元が分かるようにしておきましょう。
5. 見落としやすい「扶養控除」の4年分の見直し
これは、同居していたお父さん・お母さんを扶養していた働き世代のご家族にとって、金額の大きい落とし穴です。
国税庁のNo.1180(扶養控除)によると、扶養控除の対象になるのはその年の12月31日の現況で判定します。年の中途で亡くなった場合も「死亡したとき」の現況で判定します。つまり、年の途中でお父さんが亡くなっても、その年は扶養控除を受けられるということです。
国税庁の注記に明記されています。介護のため入院していた期間は「同居」として扱って差し支えないとされていますが、老人ホーム等へ入所している場合は、そのホームが「居所」となり同居とはいえません。同居老親等(58万円)から老人扶養親族(48万円)へ区分が変わり、控除額が減ります。年末調整の時点で「入所中」と申告していた場合は、すでに正しく処理されているはずですから、まずは勤務先の源泉徴収票をご確認ください。
一方で、「入院中だったので別居と書いてしまった」「12月31日には亡くなっているから対象外だと思って外した」という心当たりがある方は、過去5年間にさかのぼって更正の請求(税金を返してもらう手続き)ができる可能性があります。令和2年分からは扶養親族の所得要件が変わり、令和8年分からはさらに金額が見直されています。ご自分の年分の要件は、必ず税務署か税理士にご確認ください。税務署の無料相談(記帳指導ではなく「無料相談」)や、市区町村の「お悔やみ窓口」でも相談できます。
6. きょうからできる「1つの箱」の準備
相続の手続きで一番つらいのは、あとから「あの領収書はどこ」と探すことです。亡くなったあとにでも間に合いますので、次の2つだけ始めてみてください。
- 箱か封筒を1つ用意し、医療費のレシート類を全部入れる(病院・薬局・介護保険の利用料・義歯・眼鏡・おむつ)
- 通院の記録メモを1枚作る(日付・行き先・交通費。付き添いの分も)
「医療費のお知らせ」が届いている方は、それだけで金額がほぼ分かります。まずは健康保険の「医療費のお知らせ」を1年分そろえることから始めましょう。
まとめ
- 亡くなった家族のために自分が払った医療費は、自分の医療費控除に使える。故人の口座から払った分は準確定申告で精算。
- 控除額は支払額-補てん額-10万円。所得200万円未満なら10万円ではなく所得の5%で計算できる。
- 介護保険の自己負担、療養上の世話の対価、入院中の食事代、通院の電車代は対象。差額ベッド代・タクシー代・ガソリン代・パジャマは対象外。
- おむつ代は医師の証明が前提。施設入所中の特例もあるので事前に確認。
- 年の途中で亡くなってもその年は扶養控除の対象になりうる。ただし老人ホーム入所中は同居と認められない。
- 領収書は申告期限から5年保管。1つの箱に入れるだけでも十分に違います。
※この記事は、国税庁タックスアンサー No.1120(医療費を支払ったとき)、No.1122(医療費控除の対象となる医療費)、No.1126(医療費控除の対象となる入院費用の具体例)、No.1128(歯の治療費)、No.1160(障害者控除)、No.1180(扶養控除)および国税庁の質疑応答事例をもとに作成しています。控除の要件・金額・期限は税法の改正によって変わります。おむつ代の証明、扶養控除の同居の判定、準確定申告の要否など、個別の判断が必要な事項は税務署または税理士などの専門家にご相談ください。病気や介護サービスに関わる判断は、かかりつけ医や地域包括支援センター、ケアマネジャーなどの専門家にご相談ください。
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