2026-10-13
⏱ この記事は約7分で読めます
遺言執行者とは?役割・報酬・選び方をわかりやすく解説
「せっかく遺言書(ゆいごんしょ)を書いたのに、なかなか話が進まない」——そんなご家族の声をよく耳にします。遺言書があっても、それだけで自動的に財産が分けられるわけではありません。実際に名義を書き換えたり、銀行からお金を引き出したりする作業が必要で、その作業を代わりに進めてくれるのが遺言執行者(いごんしっこうしゃ)です。この記事では、遺言執行者の役割・報酬のめやす・選び方を、やさしくご説明します。
遺言執行者とは?「遺言の実現を任された人」
遺言執行者とは、遺言書に書かれたとおりに財産を分ける作業を、実際に行う人のことです。亡くなった方(遺言者)が遺言書の中で指名しておくのが一般的です。
たとえば「自宅は長男に、預金は長女に」と遺言に書いてあっても、その手続きを誰かが行わなければ、名義は変わりません。遺言執行者がいれば、その人が中心となって手続きを進めてくれます。家庭裁判所に選んでもらうこともできますが、遺言書で指名しておくほうが確実で、家族の負担も減ります。
遺言執行者は、相続人(財産をもらう人)ではなく、遺言を実行する「管理人」のような立場です。相続人どうしの利害から中立な立場で動きます。
遺言執行者がいると、何が変わる?
遺言執行者がいない場合、相続人全員が集まって話し合い(遺産分割協議)、書類をそろえて手続きをしなければなりません。人が集まれない、意見が合わない、といった事情があると、手続きは止まってしまいます。
遺言執行者がいる場合は、法律(民法1015条)により、次のような強い権限が与えられます。
- 相続財産の管理:預金の解約や不動産の管理など、必要な管理を行えます。
- 遺言の内容を実行するために必要な一切の行為:不動産の名義変更(相続登記)、預金の払い戻しなどを行えます。
- 相続人は、遺言執行者の仕事を妨げることができません。つまり、他の相続人が反対しても、遺言どおりに手続きを進められます。
これは大きな安心材料です。「遺言のとおりに分けてもらえないかもしれない」という心配を減らせます。
遺言執行者の仕事の流れ
- 就任の届出:遺言執行者が決まったら、家庭裁判所に「就任の届出」をします(遺言書で指名された場合も、家庭裁判所を通すのが原則です)。
- 相続人の確定:戸籍を集めて、誰が相続人なのかを確定します。
- 財産の調査・目録の作成:預金・不動産・保険などを調べ、財産目録を作ります。相続人に内容を通知します。
- 遺言の内容の実行:名義変更、預貯金の払い戻し、動産の引き渡しなどを行います。
- 報告と清算:仕事が終わったら、相続人に結果を報告します。
この一連の作業は、慣れていないと大変な手間がかかります。だからこそ、専門家にお願いする意味があるのです。
誰に頼めばいい?主な選び方
| 選ぶ相手 | 向いているケース |
|---|---|
| 弁護士 | 財産の分け方でもめそう、遺留分(いりゅうぶん)の心配がある |
| 司法書士 | 不動産の登記や預金の手続きが中心の場合 |
| 行政書士 | 遺言の内容が比較的シンプルな場合 |
| 信頼できる親族 | 家族仲がよく、手続きも簡単な場合 |
親族に頼む場合は無報酬で済みますが、相続人と利害が対立しやすい立場の人が執行者になると、公平に進められないおそれがあります。手続きの複雑さや家族の状況を考えて選びましょう。
報酬(ほうしゅう)のめやす
遺言執行者に専門家を選んだ場合、報酬がかかります。金額は財産の規模や手続きの複雑さで決まり、次のようなめやすがよく使われます。
| 遺産の額 | 報酬のめやす |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 20万円〜30万円程度 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 30万円〜50万円程度 |
| 5,000万円超 | 財産額の1〜2%程度 |
これはあくまで目安で、事務所によって異なります。事前に「どの作業にいくらかかるか」を見積書で確認しておくと安心です。
遺言書で遺言執行者に指名されても、就任するかどうかは自分の意思で選べます(民法1012条)。「急に指名されて困った」という場合は、家庭裁判所に就任を辞退する届出を出すか、仕事が始まっていない段階なら断ることができます。事情があれば、専門家に相談しながら進めましょう。
つまずきやすいポイント
① 遺言書に執行者を書いていない
遺言執行者がいないと、相続人全員での協議が必要になり、手続きが長期化しがちです。遺言を書くときは、執行者も一緒に決めておくのがおすすめです。
② 財産が多いのに執行者を親族だけにする
不動産・株式・複数の金融機関の預金などがあると、手続きはかなり複雑です。慣れていない親族だけでは対応しきれず、結局あとから専門家を雇うことになりかねません。
③ 「遺言執行者」と「成年後見人」の混同
成年後見人(せいねんこうけんにん)は、判断力が不十分になった本人を支援する制度で、目的が全く異なります。混同せず、それぞれの役割を理解しておきましょう。
相談できる窓口
- お住まいの司法書士会・弁護士会:遺言執行の相談や費用の目安を確認できます。多くの地域で初回相談は無料〜低額です。
- 法務局:遺言書の保管や不動産の登記について相談できます。
- 家庭裁判所:遺言執行者の就任・辞退の届出について相談できます。
この記事は一般的な情報をお伝えするものです。遺言執行者が必要かどうか、誰に頼むのがよいか、報酬がいくらになるかは、ご家庭の財産や事情によって一人ひとり異なります。実際の判断は、必ず弁護士・司法書士・行政書士などの専門家、または家庭裁判所や法務局の相談窓口にご相談ください。
まとめ
- 遺言執行者とは、遺言どおりに財産を分ける作業を実際に行う人
- いると、家族が集まれない・意見が合わない場合でも、遺言どおりに手続きが進む
- 弁護士・司法書士・行政書士・親族などから選ぶ。手続きの複雑さで決める
- 専門家に頼むと20万円〜財産の1〜2%程度の報酬がめやす
- 指名されても、就任するかは選べる。困ったら専門家や家庭裁判所へ相談
遺言書は、書いて終わりではありません。執行者まで決めておくことで、ご家族が手続きで困る時間をぐっと減らせます。まだ遺言書を書いていない方は、執行者の欄も一緒に考えてみてください。