20260928
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遺留分侵害額請求とは?請求できる金額・期限・手続きの流れをわかりやすく解説
「亡くなった夫の遺言書には、全財産を長男に相続させると書いてあった。長年連れ添った自分には、何も残らないのだろうか」——そんな不安をお持ちの方は少なくありません。実は、遺言で財産の分け方を自由に決められるといっても、一定の相続人には「遺留分(いりゅうぶん)」という最低限の取り分が法律で保障されています。この記事では、遺留分侵害額請求とは何か、誰がいくら請求できるのか、そして期限や手続きの流れまでを、専門用語の解説を添えてわかりやすく説明します。
遺留分とは「最低限保障された取り分」のこと
遺留分(いりゅうぶん)とは、亡くなった方が「これだけは残しておかなければならない」と法律で定められた、相続人の最低限の取り分のことです。遺言で財産の分け方を指定できますが、その自由には限界があり、遺留分を侵害するような遺言は、その部分について効力を失います。
たとえば、夫が「全財産を長男に」という遺言を残しても、妻には遺留分がありますから、長男に対して「自分の遺留分を返してほしい」と請求できるのです。この請求のことを遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)といいます。2019年7月の法改正で、それまでの「遺留分減殺請求(げんさいせいきゅう)」から、お金で清算する今の形に変わりました。
遺留分を請求できる人(対象者)
遺留分が認められるのは、次の方々です。
| 相続人 | 遺留分の割合(法定相続分に対する割合) |
|---|---|
| 配偶者(夫・妻) | 法定相続分の 1/2 |
| 子ども | 法定相続分の 1/2 |
| 親(直系尊属) | 法定相続分の 1/2(※相続人が親だけの場合は 1/3) |
| 兄弟姉妹 | 遺留分はなし |
ポイントは3つあります。
- 兄弟姉妹には遺留分がありません。「兄に全財産を相続させる」という遺言があっても、弟や妹は遺留分を請求できません。
- 配偶者と子どもがいる場合、遺留分の総額は遺産全体の2分の1です。
- 親だけが相続人になる場合は、遺留分の総額は遺産全体の3分の1になります。
遺産が6,000万円で、相続人が妻と長男の2人の場合を考えてみましょう。
・妻の法定相続分は 6,000万円 × 1/2 = 3,000万円。その半分なので、妻の遺留分は 1,500万円。
・長男の遺留分も同じく 1,500万円。
つまり、遺言で「全部を長男に」と書かれていても、妻は長男に対して最大1,500万円を請求できます。
遺留分を計算するときの「遺産の総額」の出し方
遺留分の計算のもとになる金額は、亡くなったときの財産だけではありません。次のものを足し合わせて計算します。
- 亡くなったときに持っていた財産(プラスの財産から借金などのマイナスを引いた額)
- 生前に贈与した財産のうち、次の3つに当てはまるもの
① 亡くなる前1年以内の贈与
② 贈与と贈与の間に1年以上(1年を超える)空いていない贈与
③ 被相続人(亡くなった方)と相続人が結んだ贈与契約に基づく贈与
こうした財産を全部含めたうえで、上の表の割合をかけ合わせて、請求できる金額を計算します。不動産が入っていると評価額の計算が難しいため、実際の金額は専門家に確認するのが確実です。
請求できる期限(時効)——ここが最も重要です
遺留分侵害額請求には時効(じこう)があります。時効とは「一定の期間が過ぎると権利が行使できなくなる仕組み」のことです。次の2つのうち、どちらか早いほうが期限になります。
- 遺留分が侵害されていることを知ったときから1年
- 相続が始まったとき(亡くなったとき)から10年
「1年」の起算点は、単に遺言の内容を知ったときではなく、遺留分が侵害されている事実と、請求すべき相手を知ったときからです。とはいえ、判断があいまいになりがちな部分ですので、思い当たる節がある場合は、早めに専門家へ相談してください。10年を過ぎると、事情を知らなかった場合でも請求できなくなります。
時効を止める「内容証明郵便」を送る
請求は、口頭で伝えただけでは証拠が残らず心もとありません。また、相手が話し合いに応じないまま1年が過ぎてしまうと請求できなくなります。そこで使うのが、内容証明郵便(ないようしょうめいゆうびん)です。内容証明郵便とは、郵便局が「いつ・誰から誰へ・どんな内容の手紙を送ったか」を証明してくれる郵便のことです。
相手に内容証明郵便が届いた時点で、時効の進行は止まります(催告/さいこく)。ただし、これで請求が完全に確定するわけではなく、通知のあと6か月以内に家庭裁判所の調停や訴訟などを申し立てる必要があります。何もせずに6か月を過ぎると、時効が再び動き出すので注意しましょう。
内容証明郵便に書く主な内容
- 誰が誰に対して請求するのか(氏名・住所)
- 遺留分侵害額請求をする旨の意思表示
- 請求する金額
- 請求の理由(遺言の内容と遺留分の計算)
- 振込先と、支払期限(例:○日以内に支払うこと)
- 支払われない場合は調停・訴訟を起こす旨
話し合いで決まらないとき——調停・訴訟の流れ
- 当事者同士の話し合い:まず相手に連絡し、金額を協議します。合意できれば、その内容を書面に残しておきましょう。
- 家庭裁判所の調停(ちょうてい):話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」を申し立てます。裁判官と調停委員が間に入り、話し合いで解決を図ります。
- 裁判(訴訟):調停でもまとまらない場合に、裁判所が判決によって金額を決めます。
家庭裁判所への申立てには、亡くなった方の戸籍謄本、遺言書の写し、財産がわかる資料などが必要です。手間も時間もかかるため、弁護士に依頼される方が多くなっています。
遺留分をめぐるトラブルを防ぐには
遺留分の請求は、どうしても家族同士の争いになります。ご自身が遺言を書く立場なら、次の点を心がけると、後に残された家族の負担を減らせます。
- 遺留分を侵害する内容にしない(配偶者や子どもに最低限を残す)
- 財産の分け方を生前に家族へ説明し、話し合っておく
- 公的な手続き(公正証書遺言など)を使い、内容を明確にしておく
- どうしても偏った内容にする場合は、専門家に相談して事前に対策を立てる
また、受け取る側としては、相続が始まったら早めに遺言書の内容と財産を確認することが大切です。期限があることを忘れないようにしましょう。
まとめ
- 遺留分とは、配偶者・子ども・親に保障された最低限の取り分。兄弟姉妹にはない
- 遺言で取り分を奪われた場合、遺留分侵害額請求でお金として返してもらえる
- 請求できる期限は、侵害を知ってから1年、または相続開始から10年の早いほう
- 時効を止めるには内容証明郵便を送り、その後6か月以内に調停などを申し立てる
- 話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・訴訟で決める
遺留分の計算は、生前贈与の有無・不動産の評価・他の相続人の状況などによって複雑に変わります。ご自身だけで金額を決めたり、話し合いを進めたりする前に、必ず弁護士や司法書士などの専門家、または家庭裁判所の相談窓口にご相談ください。法律に関する内容は、状況によって結論が変わるため、個別の判断は専門家にお任せするのが安心です。
「遺言にこう書いてあるから仕方ない」とあきらめる前に、ご自身に保障された権利があることを知っておいてください。まずは遺言書の内容と遺産の全体像を整理することが、第一歩になります。