家族信託とは?高齢者の財産管理・将来の備えをわかりやすく解説
2026年9月19日 | カテゴリ:相続
この記事でわかること
・家族信託(かぞくしんたく)とはどんな仕組みか
・成年後見制度との違いと、向いている人・向いていない人
・メリット・デメリットと、気をつけたい費用やトラブル
・始めるときに必ず相談したい専門家のこと
はじめに:認知症になってからでは手遅れになること
年を重ねると、だれでも「将来、自分で判断できなくなったらどうしよう」という不安を持つことがあります。実際、認知症などで判断力が衰えると、銀行口座や預貯金、土地や家などの財産を、自分一人で管理するのが難しくなります。家族が代わりに引き出そうとしても、法律上できなくなることが多いのです。
そんなときに役立つ選択肢のひとつが、「家族信託(かぞくしんたく)」というしくみです。最近よく耳にするようになりましたが、具体的にどんなものなのか、やさしく解説していきます。
家族信託とは?「家族に財産管理を任せる」しくみ
家族信託は、正式には「民事信託(みんじしんたく)」といいます。むずかしく聞こえますが、かみくだいて言うと
「信頼できる家族に、自分の財産の管理や運用を任せるという仕組み」です。
たとえば、自分(財産を持つ人)が「委託者(いたくしゃ)」となり、大切な人(こどもなど)が「受託者(じゅたくしゃ)」となって財産を管理します。そして、その財産から得られる利益を受け取る人を「受益者(じゅえきしゃ)」と呼びます。
むずかしい言葉の説明
・委託者(いたくしゃ)=財産を任せる人(多くの場合はご自身)
・受託者(じゅたくしゃ)=財産を管理する人(信頼できる家族)
・受益者(じゅえきしゃ)=財産の利益を受け取る人
「家族で役割を分担して、財産を守る」というイメージです。
なぜ今、家族信託が注目されているのか
家族信託が注目される背景には、認知症の高齢者が増えていることが大きく関係しています。認知症になると「自分で財産の管理をしたのか、だれかに任せたのか」を決める判断が難しくなります。そのため、元気なうちに準備しておくことが大切だと言われています。
また、高齢になっても自分の財産を使い続けたい、認知症になったあとも住み慣れた家に住み続けたいという希望を持つ方が増えたことも、注目される理由です。
成年後見制度との違い|どう使い分ける?
認知症になったときの財産管理には、以前から「成年後見制度(せいねんこうけんせいど)」というしくみがあります。家族信託とどこが違うのか、表で比べてみましょう。
| 比較項目 | 家族信託 | 成年後見制度 |
|---|---|---|
| 誰が管理するか | 家族など信頼できる人 | 家庭裁判所が選んだ人 |
| 始める手続き | 契約で比較的自由に決められる | 家庭裁判所への申立てが必要 |
| 使い方の自由度 | 契約で柔軟に決められる | 原則、本人の生活のために限定 |
| 費用の目安 | 司法書士などへの依頼料が中心 | 申立て費用+後見人への報酬(毎年) |
家族信託は「元気なうちに自分で決めておきたい」ときに選ばれることが多く、成年後見制度は「すでに判断力が衰えてしまった」ときの最終的な備えとして使われることが多いです。
家族信託のメリットと、気をつけたいデメリット
メリット(よいところ)
- 自分で使い方を決められる:認知症になっても、元気なうちに決めたルールに沿って財産が管理されます。
- 家族が責任を持って管理:家庭裁判所を通さず、家族の間で財産管理を任せられます。
- 財産を使い続けられる:成年後見制度よりも、生活費などに柔軟に使える場合があります。
デメリット(注意したいところ)
- 費用と手間がかかる:契約書の作成などに司法書士や弁護士への依頼料がかかります。
- 一度始めると簡単にやめられない:終わらせるときには、受益者などの同意が必要で、手続きが複雑になることがあります。
- 税務や法律の知識が必要:不動産の名義(なぎ)を移すと税金がかかる場合があり、専門家の助言が欠かせません。
- 家族間のトラブルに注意:財産を巡って家族間で争いになる可能性もあるため、全員でよく話し合うことが大切です。
注意:家族信託は、財産の名義や契約内容によっては税金(贈与税・相続税)や登記の手続きが複雑になり、判断を誤ると損をすることがあります。必ず、司法書士・弁護士・税理士などの専門家に相談してから進めるようにしてください。
家族信託を始めるときの費用の目安
あくまで目安ですが、一般に司法書士などの専門家に依頼すると、十数万円から数十万円程度の費用がかかることが多いです。財産の内容(土地や建物があるか、口座数が多いかなど)や、契約の複雑さによって変わるため、見積もりを事前に確認することが大切です。
まとめ|まずは家族や専門家に相談を
- 家族信託は、元気なうちに家族へ財産管理を任せる仕組み
- 成年後見制度との違いを理解して、自分に合う方法を選ぶ
- メリットだけでなく、費用・手続き・トラブルのリスクも知っておく
- 判断に迷う場合は、必ず司法書士・弁護士・税理士などの専門家に相談する
家族信託は、高齢になっても安心して自分の財産を守りたい方にとって、有力な選択肢のひとつです。しかし、法律や税金の知識が必要で、一度始めると簡単にやめられない面もあります。大切なことは、ご家族全員で十分に話し合い、専門家のアドバイスを受けてから決めることです。
将来への備えについて不安がある場合は、お住まいの地域の社会福祉協議会(しゃかいふくしきょうぎかい)や地域包括支援センターに相談窓口がありますので、そちらも活用してみてください。
本記事は一般情報の参考です。相続や税金に関する内容は、必ず司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。